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「つき刺された持続」

ルネ・マグリット (1939年)

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 暖炉から飛び出した汽車・・・それとも、暖炉に突き刺さった汽車でしょうか。唐突で、ちょっとびっくりする作品です。

 でも、時計の色と汽車の色、また鏡の枠と壁の下半分が同系色でまとめられていて、また時計の文字盤や大理石でできているらしい暖炉がくっきりとした白で、とても美しく、すっきりとした印象です。煙を吐きながら暖炉に所属してしまっている汽車の存在さえなければ、朝の光にあふれた室内風景・・・というところだったかも知れません。

 マグリットは、この絵に関しての精神分析的な説明はいっさい拒み、「神秘を喚起するがゆえに」機関車を描くという単純な動機から生まれた作品であると主張し続けました。そして、機関車とは何の関係もない別のオブジェ、つまり食堂の暖炉のイメージと結びつけることによって完成を見たのだと言っています。
 また、ある友人に書き送った手紙の中で次のように述べてもいます。
「イメージとしての性質に厳密に限定されたイメージが、ベルクソンの観念やプルーストの言葉に劣らぬくらい思考の力を明らかにすることを、証明しています。イメージが描かれたあとに、我々は、それが観念や言葉との間に持っているかもしれない関係について考えることができるのです。これは、不当なことではありません。というのも、イメージと観念と言葉は、同じ思考というものの、それぞれ異なった三つの解釈だからです」。
 
 リアリティーについて、私たちが持っている先入観に挑戦し、私たちをとりまく世界に高次の認識を与えようとするマグリットの衝動が、痛いほど感じられます。
 また時計と時間というモティーフは、シュルレアリスム芸術にひんぱんに現れますが、マグリットはブリュッセルの自宅に時計をたくさん持っており、それが少しずつ時間をずらして鳴るようにセットされていたと言われています。
 本来、時間的芸術ではない絵画の中に時間を混入させることによって、マグリットの作品は思考する芸術に昇華したように思われます。

★★★★★★★
シカゴ美術研究所蔵



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