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「アイロンをかける女たち」

エドガー・ドガ (1884年)

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 アイロンがけに疲れて、思わず大きなあくびをする女性の無防備な一瞬がとても巧みにとらえられています。彼女が握っているワインの空き瓶は、糊付けをしたシャツのカフスの型として使われていたものと思われます。
 もう一人の女性は力をこめてアイロンをかけていて、二人の力の入り方の違い、筋肉の緊張と弛緩という肉体のメカニズムの対比が、とても対照的で面白い作品です。

 ドガは、毎日の仕事に追われるパリの洗濯女を多く描いています。洗濯女たち、踊り子、カフェの歌手など、ドガが好んで描いた人々は当時、品の良くない存在とされていたため、彼の作品は世間一般にはなかなか受け入れられなかったことも事実のようです。
 しかし、画家として生涯の半ばに達するころには、ドガの主題ははっきりと決まっていて、裸婦、踊り子、歌手、洗濯女、騎手などが、彼のあらゆる芸術表現の主題となっていたのです。

 ドガは本当によく仕事をする画家で、多作です。そして、特定の主題を繰り返し繰り返し際限なく描き直したことでも有名でした。そんな彼の仕事ぶりから、残酷な人間観察者という評判もあったようですが、それはドガの、プロとしての姿勢の表れだったと思います。
 彼はある運動を、長時間の省察、研究、計算によって追求し、しかもそれを、まったく偶然にキャッチされた瞬間のスナップショットであるかのように画面に定着させることが自分の仕事であると、強く自覚していたのだと思います。

 個人的には、こんなドガの一途さ、頑固さは、けっこう好きです。  

★★★★★★★
パリ オルセー美術館蔵



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