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「アニエールの水浴」

ジョルジュ・スーラ(1883-84年)

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 スーラといえば、まず「グランド・ジャット島の日曜日の午後」があまりにも有名で、この「アニエールの水浴」はあくまでもその前哨戦・・・というイメージが強いのですが、この2つの大作は、まったく違う作品のように思われます。

 それは、同じように静かな作品ではあるのですが、「グランド・ジャット島の日曜日の午後」が完璧に沈黙の世界であるのに対して、この作品には音があるということです。
 まず、川の中で手を口に当てた少年が誰かを呼んでいるのか、声を出しているのがわかります。また、少し離れて背中を向けている少年は、魚でも獲っているのでしょうか、パチャパチャ・・・という水音がかすかに聞こえます。そして、遠景の鉄橋からは遠い列車の音が感じられますし、ボート遊びの人たちの笑い声も、かすかながら聞こえてきます。
 本当に控えめではあるのですが、「アニエールの水浴」には音があって、そして確実に、生きている人たちの呼吸が感じられるのです。

 この作品ではスーラ自身、まだ点描画を完成させていなかったため、かえって風の香りを感じさせる、印象派風の作品となったのではないでしょうか。「グランド・ジャット島の日曜日の午後」に比べると、ずっと呼吸しやすい、生き生きした作品になっているようです。
 スーラのたゆみない研究と努力が、週末にくつろぐ労働者たち・・・という普遍的なテーマを、こんなに静かでさわやかで、光にあふれた大作に仕上げました。一見、印象派に似た作品の多いスーラでしたが、注意深く配置された人物や構成を見ると、実は、一瞬の印象を描く画家ではなく、理論的、理性的な科学者のような目を持った画家だったのがわかります。

★★★★★★★
ロンドン、 ナショナルギャラリー蔵



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