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「エマオでの夕食」

ディエゴ・ベラスケス (1620年ころ)

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 聖書に主題を求め、大胆な三角構図によって描き出されたこの作品は、わりあいに無感動なベラスケスの宗教画の中では出色で、非常に劇的な動きを見せてくれています。

 パンを分け与える復活後のキリストと、イエスであることを知って、どうしよう・・と動揺する二人の弟子の三者三様の動きは本当にドラマチックで、カラヴァッジオが始めたテネブリズムと言われる強烈な明暗法の中で、生き生きと豊かな表情を見せてくれています。
 殊に印象的なのは右側後ろ向きの人物の左手の動きで、手の平に当てられた光によって非常に彫刻的な描法で表現されていながら、そこにはたしかな生命観が躍っています。顔をやや上に向けて遠くを見るような表情をしたキリストの赤い衣装の質感もみごとで、ひだの一本一本にまでベラスケスの神経が行き届いているのがわかります。
 ベラスケスは現実存在を前にして、誇張も人為性もない、そこにあるがままの真実を描くことに徹した画家でしたが、宗教画にまでも本当に生きて呼吸をしているイエスそのものの存在を示してしまっていることに、彼の絵画にかける情熱と、今後の様式の展開を予感させてくれます。

 1617年にサン・ルーカス組合に登録され、翌年、師であるフランシスコ・パチェーコの娘フアナと結婚。独立した画家としての生涯を歩み始めた頃の、ベラスケスの意欲を十分に物語る作品です。  

★★★★★★★
ニューヨーク メトロポリタン美術館蔵



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