マネがフランスの著名な小説家ゾラと出会ったのは1866年、カフェ・ゲルボワで毎週木曜日に開かれていた、マネ主催の会合の席でした。
そのころ、マネの作品は世間の不評を買っていましたが、すでにゾラは、伝統的な技法に挑戦するマネの作品を擁護し、賞賛する文章を書いていました。二人は固い友情で結ばれ、マネは感謝の気持ちを込めてこの肖像画を描いたといいます。
ゆったりと落ち着いて知的なゾラの後ろには、日本のお相撲さんを描いた浮世絵やマネ自身の作である「オランピア」などが飾ってあります。この「オランピア」はサロンで大不評だった作品ですから、ここに掛けられているというのは単なるユーモアではもちろんないわけで、羽根ペンの後ろの小冊子にさりげなくマネ自身のサインがあるところなどにも、この作品にかけた思い入れが感じ取れます。
また、ゾラの威厳に満ちた表情は、いかにマネが数少ない理解者の一人であるゾラを信頼していたかを、無言のうちに明確に表現しているようです。
★★★★★★★
パリ、 オルセー美術館蔵