なんて意地悪な作品でしょうか。こんなに醜く、ぶざまな国王を描くなんて、ゴヤは国王一家に悪意でもあったのではないかと思うほどです。
軽薄そうなカルロス三世、まるで生気の感じられない新国王夫妻、思わず笑ってしまいそうになるほど哀しく滑稽な、操り人形のような貴族たち。しかし、この作品はこれで、完成までに一年もかけた大作だったのです。
制作に当たって、ベラスケスの「ラス・メニーナス」を参考にしたのだそうですが、一見すると似ていても、この画面には奥行きがなく、息苦しいくらい狭い空間に人物が詰め込まれている感じです。しかも、王妃マリア・ルイサを中心とした13人は、不思議な直立姿勢でこちらを見つめており、何やら不気味でさえあります。
ただし、画面を彩る光と色彩の美しさはさすがにゴヤです。顔料を惜しみなく使い、貴族たちの華麗な衣装を自在なタッチで描いていて、みごとと言う以外にはありません。
しかし、その華麗さも、ここに描かれた人々の腐敗した雰囲気を救ってはくれません。ここには、放蕩と肉欲と倦怠と堕落が渦巻いており、彼ら王侯貴族たちが惰眠をむさぼる間にも、ナポレオンがピレネー越えの機会を着々と狙っていたわけで、スペインは引き返すことのできない混沌の時代へ突入しようとしていたのです。
気をつけなければ見えにくいのですが、左奥の闇に身を隠すようにしながらこちらに視線を送る、ゴヤの冷めた表情は印象的です。
★★★★★★★
マドリード、 プラド美術館蔵