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「グランド・ジャット島の日曜日の午後」

ジョルジュ・スーラ (1884-86年)

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「WebMuseum, Paris」のページにリンクします。

 当時の新進気鋭の批評家フェリックス・フェネオンは、
「グランド・ジャットは無数の斑点でできたタピストリーのように眼前に広がっている」
と感想を述べています。
 その言葉どおり、この作品においてスーラは、色彩をすべて原色とその補色、もしくはこれに近い色調に統一して、相互の並置の効果を綿密に計算しながら、豊かに響き合う色彩のタピストリーを織り上げていったのです。

 スーラの作品は、一見印象派に似た美しさで、彼自身にも「新印象派」といった名が冠されたりもしたのですが、実は印象派の画家とスーラの描いた作品には決定的な違いがありました。
 この絵を見てもわかりますが、印象派に特徴的な光と色彩のきらめき、とどまることなく変わっていく、あの流動的な空気はありません。人も木も、そしてサルや犬たちも、さらには草上に何気なく置かれた扇子、本、帽子や日傘にいたるまで、すべてがまったく動かしがたく、整然とその場所に位置づけられ、非常に堅牢な画面を構築しているのです。ここでは、微妙であるべき光の煌めきまで、みじんも揺るぎなく固定されてしまっています。
 描かれた40人以上の人々は、もちろん歩いていたり、走り回っていたり、音楽を奏でていたり…と、思い思いの日曜日を楽しんでいます。にもかかわらず、彼らはまるで時間が停止した世界で身じろぎもしない、いつ覚めるとも知れぬ夢の世界の住人のように見えるのです。

 ここには、スーラの持つ確固とした古典主義的な性格があります。彼は若いころ、アングルの弟子であったアンリ・レーマンに師事し、アングルや古典作品の模写やデッサンをしています。クラスでは決して目立つ存在ではありませんでしたが、熱心にルーヴル美術館に通い、色彩、光学、美学に関する論文に深い興味を持っていったようです。そうした下地があってはじめて、あらゆるフォルムと無数の細かい色の斑点が緊密に連関しながら揺るぎない統一を示す、この画面を生み出すことができたのだと思います。

 スーラがこの作品に着手したのは1884年で、この205.7×305.8㎝の大画面を仕上げるのに2年間を要しました。彼は数カ月間、毎日のようにセーヌ川のこの小さな島に通い、行楽客と陽の光あふれる風景をつぶさに観察したのです。そして実際の光景から、想像の世界…彼自身の夢の世界を喜びをもって組み立てていったのです。スーラは、穏やかで動きのない人物たちをカンヴァスの上に巧みに配置しながら、どれほどの幸福感にひたっていたことでしょうか。彼の内なるグランド・ジャット島の人々は、静かでやさしく、色彩の粒で描かれた陽光の中で、永遠の時を生きているのです。

★★★★★★★
シカゴ美術研究所 蔵



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