アルル時代に住んでいた「黄色い家」の中のゴッホの部屋を描いたもので、似た作品があと2点知られています。アルルで最初に描かれたと思われるオリジナルはアムステルダムのゴッホ美術館に収蔵されていますから、この作品はサン・レミに来てから描かれた模写と考えられています。
アルルの明るい太陽の光が、閉められた窓からも感じられて、質素な家具や壁の絵などが明るく平和に描かれています。この時期、サン・レミの病院に入院をしていたために模写の作品が多かったわけですが、この翳りのない絵を、ゴッホはどんな気持ちで描いたのでしょうか。
模写した作品を彼の母や妹に贈ることもあったようですが、妹のウィルヘルミネに宛てた手紙の中でゴッホは、
「僕は毎日、あの比類ないディケンズが自殺をくいとめるのに良いとしている療法を試みている。それはグラス1杯のワイン、一切れのパンとチーズ、それとパイプのタバコから成っている」
と書いています。
そして、
「僕は人生で比較的遅く絵を描き始めただけでなく、この先、余り長くは生きないだろう」
とも述べています。
アルルで強くなった自殺への意識が、サン・レミにおいて、ますます離れがたいものになっていったことを思うと、とても痛々しくて、明るさの象徴として多用されている黄色も、少し色あせて見えるような気がします。
★★★★★★★
パリ、 オルセー美術館蔵