とても生き生きとした動きに満ちたサーカスの光景ですが、スーラの死によって未完のまま残された作品です。
裸馬の上に立ち、ほとんど宙に舞っている女性や、とんぼ返りしているピエロなど、サーカスのポスターを意識してのデザインなのではないでしょうか。それは、色つきの縁取りで特別な枠をつくり、実際の風景というよりも、スーラのイメージが描かれているらしいところからもわかります。
色彩的には色数が多くなく、決して派手なわけではありませんが、輪郭線もクッキリと感じられ、非常にシャープでセンス良く、完成度の高い印象を受けます。
もしスーラがもっと長く生きたとして、その制作意欲をどういう方向へもっていこうとしていたのかはわかりませんが、少なくともこの作品に関しては、アール・ヌーヴォーや立体派の先駆をなしていると高く評価されています。きっと、より装飾的に、そしてそれを超えて、より造形思考の強い、新鮮な作品を生み出していったことは間違いないという気がします。
★★★★★★★
パリ、 オルセー美術館蔵