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「シスレー夫妻」

オーギュスト・ルノワール (1868年)

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 そっと女性に声をかけている男性は、画家のアルフレッド・シスレーです。
 そして、その腕にすがって、明るい赤と黄色のストライプの衣装を身につけた、わりとたっぷりした感じの女性は、どうやらそのタイトルを裏切って、シスレー夫人ではないようです。諸説いろいろあるようですが、シスレーは当時、花屋の娘で後に結婚したユジェニーと同居していましたから、その人なのかも知れません。
 しかし、「日傘のリーズ」という作品で知られる、ルノワールの当時の愛人であったリーズ・トレオによく似ているとも言われていますし、ルノワール自身もある手紙の中で、「リーズとシスレー」をテーマに描いた作品があることを示唆しているので、その絵がこれである可能性も高いと言われています。

 ルノワールは、特に人物像に深い興味を持ち続け、堅固で流動的なマチエールを好んで描きました。また、近代的な色合いを意図的にテーマに選んでいる点も、当時のルノワールの収入源が肖像画であったことを充分に納得させてくれます。注文主を満足させる肖像画のあり方を、ルノワールは熟知していたのでしょう。

 このころ、たいへん貧しく、絵の具代にも苦労したルノワールは、晩年、このように述懐しています。
「私は生来がんばり屋のたちではなかったし、あのがんばり屋のモネのやつに肩を叩かれ励まされなかったら、絵筆を捨てていたかも知れない」。
 そんな貧困の中でも、モネとの友情に支えられながら、ルノワールの描く作品は、決して見る者の期待を裏切らない豊かさと気品を保ち続けているのです。

★★★★★★★
ケルン、ヴァルラフ=リヒャルツ美術館蔵



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