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「シャポンヴァルの風景」

カミーユ・ピサロ (1880年)

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 なんとなく、中世のタピストリーを思わせるような、筆をササッと動かして色を重ねた感じの、やさしい作品です。ふんわりとソフトな色彩がさわやかに美しくて、夢の世界のような、穏やかなピサロらしい風景画です。
 この作品は、1879年4月10日から開催された第4回印象派展に出品されたもので、印象派展には毎回出品していたピサロの、38点の作品のうちの1点です。他の画家たち、ルノワール、シスレー、セザンヌなどは、印象派展の不評に幻滅を感じて参加しなくなっていった中、ピサロだけは熱心に出品を続け、自らの絵画の方向性を模索していたようです。

 それまでの彼は、構図を前景、中景、背景の基本的要素で入念に組み立てていました。しかし、この「シャポンヴァルの風景」において、ピサロは、現実感や奥行きを出すことよりも、水平の帯・・・とでも呼べるような構成でまとめることに専念しています。それはどこか抽象的でさえあり、畑や家や丘や、その上の空がつくる水平の帯は、一つ一つ積み上げていったような趣きがあります。
 それに比べると、前景の牛と牛飼いの少女の姿はぐっと印象的で、この作品の主役を思わせます。そして、孤立して立ちすくんだような彼女の全身を包む青い衣装、屋根、空の青がさわやかに美しくて、やはり少し現実離れした印象を受けます。

 この作品を描いた1年後、ピサロは、
「ここオスニーではもっぱら制作に専念しているが、時には外部の批評を読んでみたいという気も少しする。もしロンドンなら、未完成の作品を見せたと責められるが、ここだと目が“青を見る画家たちの病気にかかっている”といって非難される」
と言っています。
 彼の抽象へのアプローチに、“青”はとても重要な存在だったのではないでしょうか。

★★★★★★★
パリ、 オルセー美術館蔵



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