「パレード」と同じく、パリのナイトクラブの情景を描いた作品です。
しかし、表現方法はまったく正反対で、「パレード」が静なら「シャユ踊り」は動であり、ある意味では騒でもあります。あまりスーラらしくない暖色の多用やユーモア感覚も、実は友人の美学者シャルル・アンリやポスター作家のジュール・シェレの影響なのだと言われています。
あいかわらず丹念な点描画で感心させられますが、点描画であることすら忘れてしまうほど、この作品を包む楽しさと明るさが嬉しくなってしまいます。内省的なスーラにも、こんなセンスが隠れていたのだ…と。
この作品で面白いのは、シャユ踊りを演じるダンサーの上げた足とコントラバスのネックの斜めの線の平行、ダンサーのスカートのすそのきれいな曲線、靴の先の蝶リボン、男性のダンサーが着ている上着のすそのはね上がり具合など、複雑な動きに満ちた線の世界ができ上がっているということです。スーラの作品の中でも、こんなに線を意識し、にぎやかで動きのあるものはめずらしいと思います。
この絵を見ると、彼がそれまでの自分に満足せず、新しいものにチャレンジしていこうとする意欲のある人であることを感じさせてくれます。
スーラは、めずらしくウキウキと制作したのではないでしょうか。
★★★★★★★
オッテルロー、クレラー=ミュラー美術館蔵