美しく優雅な上流階級の婦人とその子どもたち・・・。夢のようなこの作品は、1879年のサロンに出品して絶賛され、ルノワールの成功を確固たるものにしてくれました。
モデルは、パリのグルネル通りの邸宅でサロンを催していた社交界の有名人マルグリット・シャルパンティエとその長女ジョルジェット、そして息子のポールです。真ん中の愛らしい少女が実は男の子だったということも驚きですが、上流社会の肖像画でありながら、けっして肩肘張らない、くつろいだ自然な雰囲気にも心から魅了されてしまいます。
そっと見交わす子どもたちの愛らしい表情、手や足の動き。それを見つめるシャルパンティエ夫人の暖かさとゆとり。画面はこの上ない幸福感に満たされています。
ルノワールはシャルパンティエ家のいわば「お抱え画家」となったわけですが、これはつまり、将来を約束されたようなものでした。この作品は、会場の一番目立つ位置に展示され、批評家たちはモデルのシャルパンティエ夫人を尊重する気分も手伝って、ルノワールのサロンへの復帰を歓迎したのです。
また、プルーストは小説『見出された時』の中でこの作品に触れ、
「ティツィアーノの最高傑作に匹敵する絵画」と驚嘆し、ルノワールを「他の誰よりも優雅な室内と美しい装いからかもし出される詩的感興を表現できる画家」
と絶賛しています。
しかし、この言葉が大げさに感じられないくらい、この絵はみごとです。子どもたちの輝くような肌や髪の色、布地の素材感などが入念に描き込まれていて、その豊かな色彩の表現には、ただうっとりするばかりです。
★★★★★★★
ニューヨーク、 メトロポロタン美術館蔵