• ごあいさつ
  • What's New
  • 私の好きな絵
  • 私の好きな美術館
  • 全国の美術館への旅

「セネシオ」

パウル・クレー (1922年)

ジャンプ

ここをクリックすると、作品のある
「Paul Klee」のページにリンクします。

 クレーの無垢な眼差しが感じられる、色彩輝く美しい作品です。
 クレーは、植物にも夢中でした。「セネシオ」というラテン語は野生の「のぼろ菊」を示す言葉で、この作品はまさに、花の顔といっていいのだと思います。そして….そう、ちょうど子供が描いた顔・・・そんな感じです。

 クレーは、子供の絵のような、簡潔な表現をズバリととらえることのできる画家です。幾何学的な形が基本になっていますが、決して冷たい印象ではなく、その眉や眼や口元には、少し顔をしかめたようなユーモラスな表情があります。生き生きとして明るく、見る者を思わず微笑ませてくれるクレーらしい作品なのです。
 クレーの考えによると、子供の絵は「脳髄からしぼり出された」ものでないため、クレー自身の絵より優れているのだそうです。そして彼自身、子供のように歴史や文化の垣根に無頓着で、古代エジプトの彫刻にもミケランジェロやレンブラントの作品にも、同じ深みと世界を感じていました。一つの作品の創造にも、さまざまな源泉があり、そのあらゆる要素の中から信念をもって選び出したものを作品として形にしていったのです。

 クレーにとって、出来上がった絵はその背後にある思考パターンの何らかの意味を伝えるべきもので、最終的な芸術的イメージは、着想とか連想とかいうものからこそ生まれるべきものでした。彼はこの単純とも言える視点を発展させることに生涯の大半を費やしたと言われていますが、そんなところも、子供の反応、子供の描く絵を高く評価していたクレーらしいところです。
 この明快で幾何学的な作品も、クレーの見いだした道の途中に位置する、クレー自身が生命を吹き込んだ「花の顔」なのです。

★★★★★★★
バーゼル美術館蔵



page top