明るく華やかで、やさしくて美しい、幸福な画面・・・。隅々にまで光があふれ、愛があふれ、そうそう、これがルノワール!と言ってしまいたくなる作品です。おそらく、ルノワール作品の中でも最も人気のある一作ではないでしょうか。
モデルの姉妹はルノワール独特のつややかな髪とピンクの頬をもち、育ちの良さそうな穏やかな雰囲気を漂わせています。姉の帽子と妹の帽子を飾る花の一輪がおそろいの赤で、その愛らしさに誰もが微笑んでしまうのではないでしょうか。
舞台となっているのは「舟遊びする人々の昼食」にも登場したレストラン・フルネーズのテラスで、素材も場所も、まさにルノワールお気に入りの条件がそろっています。こんなに豊かで美しい色彩を日差しの中で自由に駆使し、生き生きと描ける画家は、やはりルノワールに尽きるのではないでしょうか。
さすがに印象派を代表する画家・ルノワール!・・・と思ってしまいますが、ルノワール自身は単に「印象派」に分類されることには、承服しがたく思っていたようです。
「私は一度だって殉教者を演じるつもりはなかったし、たとえ何度もサロンで落選しても、出品し続けたはずだ。(略)これまで常に考え、今でも考えているのは、先人がやってきたこと、しかも私よりはるかに上手にやってきたことを、自分は続けるしかないということだ」
と語っています。
楽天的と思われているルノワールにも、実はこのように求道者のような面があり、そして純粋に描くことが好きな、メゲない画家だったのだとあらためて分かります。しかし、彼の作品からは眉間に皺を寄せたような苦しさは微塵も感じられません。テラスでポーズする姉妹は、あくまでも幸せであたたかい光に包まれています。
★★★★★★★
シカゴ美術館蔵