紫がかった美しいブルーの衣装に身を包んだチャーミングな女性を描いた作品です。 モデルの女性の表情も、バックの淡い色調も、いかにもルノワールらしく明るく輝いています。
この作品は、1874年の第1回印象派展に出品されたもので、ルノワール自身が事前に目録にメモしたものを見ると、彼としてはこの作品に、出品作中最も高値をつけていたようです。それほどの自信作であり、お気に入りだったということでしょうが、モデルの愛らしい美しさを見れば、それも十分納得できます。
ルノワールが「現代的な人物像」を好んで表現しようとしていたのは、この絵を見れば一目瞭然です。モデルはただ美しいだけではなく、非常に生き生きと描かれていて、本当に今にもニッコリ微笑んで、元気にこちらに向かって歩いて来てもおかしくない気がします。
このとき、印象派展には他に、モネ、ドガ、ピサロ、シスレー、セザンヌなど、そうそうたるメンバーが出品していたにも関わらず、注目こそされたものの結果は不評でした。しかし、その中でも、ルノワールに対する評価は決して悪くなく、
「ルノワール氏は大胆だ」、
「ルノワール氏の前途は大いに有望だ。彼は虹色の光彩、ターナー流の玉虫色やブロンドの色調に満足しきっている。それでも、デッサンのほうはしっかりしている」
など、批評家たちからも好意的に受け止められたようです。
ルノワールの作品が日本でとりわけ人気があるのには、秘密があります。彼の描くものは、いつも人を幸福な気持ちにさせてしまう生命感にあふれているからなのです。
★★★★★★★
カーディフ、 ウェールズ美術館蔵