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「ヒエロニムス・ホルツシューアー」

アルブレヒト・デューラー   (1526年)

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 この眼光鋭い赤ら顔の男性は、ニュルンベルクの市会議員だったホルツシューアー(1459-1529)という、当時57歳の人物です。
 デューラーの、1520-21年にかけてのネーデルラント旅行は、とりわけ肖像画に豊かな実りをもたらしたと言われていますが、この作品も、モデルの内面的迫力とエネルギーがそのまま伝わって、ドイツ・ルネッサンスの典型的人間像が力強く描かれています。
 この絵では、確かに目が印象的なのですが、よく眺めているうちに、頭髪や髭の精妙な描写に気づき、デューラーの職人芸とも言うべき腕の確かさに驚かされます。現実に、ホルツシューアーは、このとおりの髪と髭を持っていたのだろうと思います。

 かつて巨匠ジオットがそうであったように、デューラーの精密な描写力と手先の器用さには定評があります。たとえば、コンパスなしで完全な円を描き、定規なしで定規でしか引けないような直線をたやすく引くことができたと言われています。
 また、ヴェネツィア派の大画家であり、デューラーがもっとも尊敬したジョバンニ・ベルリーニ(1430-1516年)の求めに応じて、彼の目の前で特に選ぶこともなく何本かの筆のうちの一本をとり、長く複雑な形の女性の頭髪をあっと言う間に完璧に描き上げて、ベルリーニを感激させたという逸話も残っています。

 もちろん、そうした手先の器用さが即芸術家としての価値につながるわけではありません。しかし、このエネルギーあふれる作品を見ると、デューラーはそのことを教えられなくてもごく若いころから感覚的によく知っていて、明白な自意識をもって「職人」ではなく「芸術家」となり得た天才だったのだと強く感じます。

★★★★★★★
ベルリン国立美術館蔵



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