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「フェリーペ四世」

ディエゴ・ベラスケス (1625-28年)

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 線の細い気品を漂わせるフェリーペ四世の肖像画です。八頭身はあると思われる、スーパーモデルみたいなスタイルの良さ、細い足、女性的な白い手、柔らかそうな巻き毛・・・。どれをとっても優雅この上ない当時の国王フェリーペ四世です。

 ベラスケスの手になるフェリーペ四世の肖像画は現在9点しか残っていないのですが、初期のころは宮廷肖像画の伝統にもとづくリアリスティックな描写がなされていたのに対し、しだいにベラスケス本来の優雅な表現となっていきます。
 これは「王家の画家」の称号まで授けられたベラスケスの、彼らしい研究の成果だったのです。彼の作品は決して多いほうではありません。しかし、その作風には同じものがなく、絶えず変化し続けていたのです。彼はただの天才ではなく、絶えざる努力の人でした。

 この作品について言えば、X線の照射によって、この下にもう一つの「フェリーペ四世」が描かれていることがわかっています。加筆修正が日常茶飯事だったベラスケスではありますが、このように人物全体が大幅に描き直されているのには驚きです。非常にリアリスティックな描写から、このようにかなりエレガントな国王に変わっているのを見て、当のフェリーペ四世もご満悦だったのではないでしょうか。
 「王家の画家」として生きたベラスケスの、短期間における非常に顕著な画境の変化と言ってよいのかもしれません。彼は変化をこそ最も愛した、好奇心旺盛な巨匠だったのです。   

★★★★★★★
マドリード プラド美術館蔵



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