この二人の少女は、当時フェルナンド・サーカスで実際に活躍していたアンジェリーナとフランシスカ・ワルテンベルグ姉妹です。
二人の衣装も靴も床の色も全部黄色で統一されていて、こってりした赤やブルーが印象的なルノワールにしては、けっこうめずらしい作品のような気がします。
それにしても、なんて明るく可愛らしい画面なのでしょうか。二人の少女の愛らしさ、そしてある種のりりしさも、とても微笑ましく映ります。
そして、もう一つ感じるのは、なにやらとても食欲の湧いてくる色調だということです。そう言えば、食卓をオレンジ色で統一すると食が進むようになる・・・と聞いたことがありますから、そんな関係なのかも知れません。なんとなく、フルーツの香りが漂ってくるような、美味しそうな作品です。
このサーカスは当時、ルノワールのアトリエに近いパリのロシュシュアール大通りにあり、ドガやスーラ、ロートレックなども作品の題材にしています。この時代、サーカスは都会の人々の優雅な娯楽の一つだったのでしょう。そして、その華やかさは、画家にとっては魅力的なテーマだったと言えます。
でも、動きの速いサーカスの風景ではなく、二人の少女の愛らしさに注目して描いたところに、いかにもルノワールらしい優しい視線を感じさせます。
★★★★★★★
シカゴ美術館蔵