澄明な光の中に置かれた食器やパンは、明確な輪郭線、そして白、黒、黄色といった抑制された色彩によって、非常に瞑想的に描き出されています。私たちは、ここに画家の知的探求の成果を見ることができ、物の調和、リズム、輪郭、そして微妙な色調が忍耐強く分析されているのを感じることができるのです。
ジョルジョ・モランディ(1890-1964年)は20世紀イタリア最大の画家でありながら、とても特異な孤高の芸術家でもありました。彼は、いかなる芸術運動にも参加せず、他の画家との交流もほとんどもたずに過ごしたのです。そこには、モランディの生き方や性格的なものもあったのかもしれませんが、何よりも彼の興味は、びんのある静物画と風景画という二つのテーマにしか注がれなかったのです。
確かに、初期のころのモランディからはセザンヌへの尊敬や、またイタリア未来派との交流、さらに形而上絵画(ピットゥーラ・メタフィジカ)への共感も感じられ、画家が決して閉鎖的な人物ではないことを示しているのですが、1920年以降、彼の探求は上記したようなごく限られた、地味な主題へと収れんされていったのです。
さらに、モランディの行動範囲は故郷のボローニャと、夏を過ごすアペニン山麓の小さな村グリッザーナに限られました。彼は生涯、ボローニャで描き続けた画家だったのです。ボローニャで学び、ボローニャのアカデミーで版画技術の教授を務めながら、ジョットのフレスコ画、マザッチョ、ウッチェロ、そしてセザンヌ、ルソーなどを学び、そこから彼独自の静寂に満ちた画境を確立していきました。それは、同時代のどの様式をも超越したものだったのです。
静謐なる静物…と聞くと、私たちはシャルダンを思い浮かべます。シャルダンの描いた「物」たちは永遠性を秘め、神の領域にまで踏み込んでしまったような美しさで鑑賞者を魅了します。しかし、モランディの描く「物」たちは、厳密な制作態度のもと、穏やかに抑制された色遣いで、よけいな思い入れを排した一つ一つの「物」たちとしてそこに存在しています。それは声高でなく、あくまでも静かでセンスのよい調和を保っており、そしてなぜか彼らは汚れない光に包まれた、夢の中の「物」たちのようでもあります。
やがて晩年には、抽象と言っていいほどに対象はさらに簡潔化され、背後の黄色い壁に溶け入ってしまうほどになっていきます。生涯をボローニャで過ごしたモランディの内なる光は、ますます自由で豊かな輝きを見せていくのです。
★★★★★★★
デュッセルドルフ、 ノルトライン=ヴェストファーレン美術館 蔵