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「ブルートゥスのもとに息子の死体を運ぶ警士たち」

ジャック・ルイ・ダヴィッド(1789年)

ジャンプ

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「WebMuseum, Paris」のページにリンクします。

  専制的な王タルクィニウス・スペルブスを追放し、最初の執政官の一人に選ばれたとされるルキウス・ブルートゥスは共和政樹立の立役者として知られています。しかし、王の甥であったため、あえて馬鹿者を装ったとされ、一方で、スペルブス王の復帰を画策し、反乱に加わった息子たちを処刑したとの伝説も残っています。「ブルターク英雄伝」によると、「冷たい水で鍛えたように天性冷酷で、教養によって和らげられない性格を持ち、独裁者に対する怒りから自分の息子を殺すことまでした人であった」とされています。

 それが本当かどうかはわかりませんが、自ら処刑の命令を出した息子が死体となって家に運ばれてきた場面を描いたこの作品は、ダヴィッドらしい新古典主義の様式を示した良い例と言えそうな気がします。画面の奥行にしたがって与えられる面が画面に平行な面となっていて、画面の中の線や形体が直線的で、しかも画面の縦軸、横軸に平行して配置されるという明確な特徴は、まさしく新古典主義のものです。また、激情を押し殺した静的な画面、重々しさと明快さを感じさせる輪郭線、印象的な朱色の使い方など、切れ味鋭いダヴィッドの、見事な力量が発揮されています。
 さらに、ちょっと気づきにくいのですが、中央のテーブルに置かれた籠や毛糸の玉、刺繍針など、この部分を拡大しただけでも一個の静物画と言えるほど、ダヴィッドの描画技術は抜きん出ていて、その柔らかな質感は思わず触れてみたくなるほどです。全てをおろそかにしない巨匠ダヴィッドの精神力は、絵画以上のものを教えてくれているような気がします。

 それにしても、嘆き悲しみ、取り乱す妻子を背にして、ブルートゥス自身も、決して冷酷に徹することができない一人の父親の顔を見せていることはダヴィッドの配慮かもしれません。悲劇的なテーマの中の、かすかな救いにも感じられます。

★★★★★★★
パリ、 ルーヴル美術館蔵



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