この大作は、1873年のサロンに落選したものですが、クールベの描く写実主義的な壮大な構図に挑戦しようとした力作であったと評価されています。
また、この作品は陸軍学校の「祝祭の間」で制作されたもので、シャルル・ル・クールの友人でもあるダラス大尉の夫人と、ル・クールの息子がモデルとなっているのだそうです。
ルノワールは、夫人のかぶる黒い水玉のヴェールの美しさに感動し、特別に夫人の頭部だけの習作も制作したほど、この作品には思い入れていたようです。躍動的な馬の動き、目の輝き、脚の配り方のわりに、乗っている二人がごく難なく乗りこなしている様子が少し不自然な気もしますが、上流階級の人々の生活が垣間見える、ルノワールお得意のテーマであったと思います。
しかし、このあと、彼はル・クール一家と仲違いし、行き来をしなくなってしまいます。理由は今もって不明ですが、この作品のサロン落選後、ルノワールは1873年の落選展に出品し、公認美術界とは訣別する意思を示してしまうことになるのです。
★★★★★★★
ハンブルグ美術館蔵