ルノワールは1883年にダンスを主題にした連作を完了しますが、ほかに「田舎のダンス」と「都会のダンス」があります。
このうち、「田舎のダンス」のモデルは、後に妻となるアリーヌ・シャリゴですが、この「田舎のダンス」と「都会のダンス」のモデルにはマリー・クレマンティーヌ・ヴァラドンを起用しています。この女性は1883年12月に息子モーリス・ユトリロを産んでおり、その父親はルノワールであった可能性が大きいと言われています。
そう言えば、「田舎のダンス」のアリーヌ・シャリゴがコットンのドレスであるのに対して、この作品や「都会のダンス」のヴァラドンはタフタの美しいドレスを身にまとっています。それに、3作の中でも特に、この作品の少女は可憐で可愛らしく描かれていて、やはりルノワールのお気に入り・・・という感じがします。そして、ドレスのすその動きで、彼女が運動神経よくクルクルと舞っている様子がよく表現されて、こんな軽やかな感じもルノワール好みなのだろうと思います。
パートナーや背景の人々の輪郭はもう一つはっきりしないのに、ルノワールらしいきれいな赤の帽子に縁取られた彼女の顔はクッキリとして、はつらつとした若さにあふれています。
★★★★★★★
ボストン美術館蔵