円熟した明暗の中で、盲目の詩人ホメロスの胸像を見つめるアリストテレスが描かれています。魂がそのまま語りかけてくるような、見る者の心に深く沈潜していく作品で、あらためてレンブラントの力量の素晴らしさを実感させられます。
こんなに静かな作品であるのに、眼を離せなくなってしまうのは、このアリストテレスがレンブラント自身だからなのかも知れません。彼の心の動きがそのまま伝わってきてしまうからだという気がします。
レンブラントは晩年、彼自身もほとんど盲目となりますが、盲目の詩人ホメロスをここで描き、いつくしむ様子は暗示的です。限りない優しさと安らぎの境地が潮のように伝わってきます。
★★★★★★★
ニューヨーク、 メトロポリタン美術館蔵