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「マントの橋」

カミーユ・コロー(1868-70年)

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 マントは、パリの西60キロほどの小都市で、コローは1850年以降毎年訪れて、その風景を何点か制作しています。

 手前の木々のゴツゴツとした強さと後景の橋の規則的な丸みが対照的で、おだやかな画風のコローにしてはわりと大胆な構図かも知れません。
 しかし、手前の緑と川面の青、そして木々の葉から空へと、やはりコローらしい安心感に満ちた静かな風景で、安らぎをおぼえます。光の具合もあふれるほどではなく、釣り人の帽子だけがチョコっと赤いのも、あくまでも控えめでやさしく、こんなところもいかにもコロー・・・と思わせてくれます。
 「自然は嫉妬深い恋人だ。彼女から離れるのは危険だ。なぜなら、次にはもう会ってくれなくなるからである」
と、いつも自然を見る目を養い続けたコローは、風景画を描くために生まれて来たような人だと思います。緑を緑として、彼ほど豊かに表現し得た画家はいないのですから。
 あの自信家のクールベにさえ、
「フランスで真の画家と言われるのは僕です。・・・それから、あなたです。」
と言わせたのですから、嬉しくなってしまいます。

 でも、コローはとても控えめな人柄だったので、天候や時間に即した外光表現の成果も、印象主義まであと一歩のところまで来ていながら、それをことさら強く主張することなく引っ込めてしまうようなつつましさがありました。だから、現在、あれほど美しく自然を表現できる画家でありながら、コローというと、なんとなく「バルビゾン派かな?」程度の認識しか持たれていないのかも知れません。
 それには、絵を無理して売らなくてもよかった、彼の経済的環境も大きく影響しているのかも知れません。だからこそ、コローの作品は生涯清らかな緑と光に満ち、節度ある生活態度とともに人々に愛され続けているのだと思います。

★★★★★★★
パリ、 ルーヴル美術館蔵



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