画面の中から、人々の笑い声や音楽が聞こえてきます。
この作品の舞台となった「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」は、モンマルトルにある庶民的なダンスホールでした。木漏れ陽が、踊ったり談笑したりする人々に降り注いで、みな一様に幸せそうです。
この作品は、喫茶店やフランス料理のお店に限らず、日本中で見かけるのですが、ルノワールは日本人に好まれる画家のNo.1だと言われています。
やはり、この光の澄明さ、ソフトでやさしい雰囲気、華やかさなどが文句なしに愛されてしまうのでしょう。絵からあふれ出て来る幸福感は独特で、しかも自分本位ではないため、見る側の私たちまで何やら幸せな気分になってしまうのです。そういう意味でも、ルノワールは、稀に見る素晴らしい画家でした。しかもその作品から香り立つ言葉にできない優しさは、彼がとても大らかな人柄だったことを感じさせてくれます。
印象派の中でもルノワールの主要な関心は、風景よりも人物やその風俗にあったらしく、光を色彩によって表現する印象主義の手法を形成したあと、その光の美しさを、人物や群像の表現に適用しようと努めるようになります。
そんな彼の努力が花開いたように、作品の中の人々は、ルノワールの光の中で歓びに満ちています。
★★★★★★★
パリ、 オルセー美術館蔵