日本語のタイトルは「花飾りの女」といって、アレクサ・ワイルディングをモデルにして、4カ月もかかって描き上げた華麗な大作です。
画面上部の天使はいずれもウィリアム・モリスの次女メイで、要するにロセッティの愛人でもあったジェイン・モリスの娘ということになり、このへんにも2人の親交の深さがうかがえます。
ところで、ロセッティの作品では、植物のイメージが画面の中で重要な意味をもつことが多く、ロセッティは植物の花言葉をもとにしたイメージで画面の装飾性を高め、同時に描かれている女性そのものの性格や人がらを暗示しようとつとめていたようです。
そういう意味では、この作品は「花飾りの女」というやさしい題名のわりには恐いものがあります。この中に描かれているバラやギンバイカは「愛」を表すものの、スイカズラは甘い香りで蜜蜂をひき寄せる誘惑の花だし、サンザシは「偽りの魅力」という花言葉を持っています。
ロセッティ自身がどこまで意識していたかはわかりませんが、女性美を追究し続けた彼にとっても、本物の女性はなかなかしたたかで恐い存在だったのかも知れません。
★★★★★★★
ロンドン、 テイトギャラリー蔵