ダ・ヴィンチは何百枚もの素描を描いています。それは、万物に対するレオナルドの尽きない興味の証明なのでしょう。
この非常に有名な「人体比例図」は、なんとローマ時代の建築論の一説を図解したもので、その中で、人間は万物の尺度として示されているのです。
ダ・ヴィンチは、鳥や植物や水の動きなど、目に見えるものすべてを学ぼうとしていました。そして特に、人体の構造に強い興味を持ち、解剖という作業にのめり込み、子宮内の胎児にまでその興味は及んでいきました。
そうしたダ・ヴィンチのノートを見ると、左から右に端正に書かれた鏡文字の注釈で、隙間なく埋められているのが分かります。つまり、文字を裏返しに書いているのです。
なぜ鏡文字を使う必要があったのか、さまざまな説がありますが、この作品に見られるような丹念な仕事ぶりを見てしまうと、ダ・ヴィンチが単なる天才ではなかったことを実感します。彼の中の豊かな感性が、いつも発見することの喜びに満ちていたことが震えるように伝わってくるのです。。
★★★★★★★
ヴェネツィア、 アカデミア美術館蔵