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「人生の三世代」

ジョルジョーネ  (1510年ごろ)

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 人生の三世代というテーマは、多くの画家が好んで描いたものです。それも、なぜか不思議と人生の晩年に描くことが多く、この作品もまたジョルジョーネの遺言と言ってもいいような時期に制作されています。

 ジョルジョーネ(1477/78-1510年)は、1510年の夏に疫病によって命を落としています。ですから、これは最後の作品群の一つと考えられ、二人以上の人間の手が入っていることから、すべてがジョルジョーネ自身の作品ではないこと、もしかすると追随者、模倣者の作である可能性も捨てきれないものなのです。
 しかし、この微妙な光の作用、あまりに物静かで瞑想的な雰囲気は他の画家とは一線を画すものであり、ジョルジョーネ独自の世界観と言えます。
 老人だけが物言いたげにこちらを見詰め、他の二人は何事かを語り合っているようです。少年の手の中には手紙のようなものがありますが、楽譜のようにも見え、彼らが何を話し合い、どういう関係であるのかは謎です。謎は、ジョルジョーネ作品には常につきまとうものでもありますが。

 ジョルジョーネは、16世紀初期のヴェネツィア絵画における革命児です。ジョヴァンニ・ベッリーニの工房で学んだあと、レオナルド・ダ・ヴィンチのスフマート技法と明暗法を巧みに吸収して発展させ、親密で、時が止まったかのような詩的な様式を確立させていきました。
 ジョルジョーネの作品たちは、主にヴェネツィアの貴族階級の知的サークルのために描かれており、ある意味、決まり事を無視しているため、難解な図像が多いことでも知られています。代表作の「ラ・テンペスト」「眠れるヴィーナス」「三人の哲学者」などは、現在でも、その解釈に確定的なものはありません。

 そんな人々の戸惑いを楽しむかのように、彼は32年ほどの短い生涯を閉じてしまいます。画家の人となり、詳細な活動などにはいまだ不明な点も多く、黙して語らぬ三人の人物そのままに、真作の同定さえ、後世の私たちに容易に許してはくれないようです。

★★★★★★★
フィレンツェ、 ピッティ美術館 蔵

<このコメントを書くにあたって参考にさせていただいた書籍>
  ◎西洋美術館
       小学館 (1999-12-10出版)
  ◎西洋美術史(カラー版)
       高階秀爾監修  美術出版社 (1990-05-20出版)
  ◎オックスフォ-ド西洋美術事典
       佐々木英也著  講談社(1989-06出版)
  ◎イタリア絵画
       ステファノ・ズッフィ編、宮下規久朗訳  日本経済新聞社 (2001-02出版)
  ◎ルネサンス美術館
       石鍋真澄著  小学館(2008-07 出版)



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