• ごあいさつ
  • What's New
  • 私の好きな絵
  • 私の好きな美術館
  • 全国の美術館への旅

「光の帝国」

ルネ・マグリット (1954年)

ジャンプ

ここをクリックすると、作品のある
「CGFA」のページにリンクします。

 この超現実の世界・・・本当にマグリットらしい端正で、そして矛盾に満ちた世界です。

 見た瞬間は気がつきません。なんということもない一軒の白い家が描かれ、そして街灯に明かりがともって・・・でも、すぐに、これって何か変・・・と気づきます。空はまぶしいくらいに青くて、白い雲が浮かんでいて・・・つまり、白昼の空の下に夜の風景が広がっているのです。あまりに写実的だから、かえって不思議な、恐怖に近いときめきを感じます。
  「光の帝国の中に、私は相違するイメージを再現した。つまり夜の風景と白昼の空だ。風景は夜を起想させ、空は昼を起想させる。昼と夜のこの共存が、私たちを驚かせ魅惑する力をもつのだと思われる。この力を、私は詩と呼ぶのだ」とマグリットは語っています。
 マグリットの絵にはいつも、相互に激しく矛盾する要素が明確に存在していて、そして、それが見る側の心を刺激し、自分でも考えていなかった方向に心が動いてしまいます。それはけっこう、衝撃的なわりには安らぎだったりするのですが・・・それがマグリットの言う「詩」なのでしょうか。

 ところで、この作品の題名は、詩人のポール・ヌジェによってつけられたものですが、実際はマグリット自身がタイトルを考えることが多く、噂されているように、画家以外の人がタイトルをつけるというようなことは、きわめて少なかったようです。また、友人たちが提案したタイトルを受け入れることもめったになく、数々の独創的な題名のほとんどはマグリット自身が考え出したもののようです。芸術は本能や感情と同じくらい精神活動の産物であるという信念を持ったマグリットらしい頑固さだと思います。
 二階の左隅の二つの窓から漏れる明かりは、マグリットの意を受けたように、永遠の秘密を秘めて息づいています。

★★★★★★★
ブリュッセル王立美術館蔵



page top