セザンヌにはめずらしく、ザワザワと風の音が聞こえるような、荒々しい作品です。彼は若いときに「激しい風に揺れる樹」をテーマにした詩を書いていますが、自然の荒々しさに抗しながら立つ大きな木・・・というロマンティックなイメージに、ずっとひかれ続けていたようです。
静かで美しい色使いの風景画が多いセザンヌですが、やはり内に秘めたものは強い意志で、こうした、がっしりとした構成の作品もまた、彼の人柄の一部なのだということを改めて感じさせてくれます。
風に吹かれる木の幹を中心とした、見るからに単純な構成ですが、それだけに予断を許さない緊張感がみなぎっていて、ほとんどグリーン系統の色彩だけで木々を表現しているところにも、画家の決意・・・のようなものを感じてしまいます。
★★★★★★★
ブラジル、 サンパウロ美術館蔵