まっすぐにこちらを見つめる少女の、強い視線が印象的です。
彼女にはどんなウソも見透かされてしまいそうで、ムンクがこんなにはっきりした、的確な絵も描くのだということに少し驚きます。彼が奨学金でパリに出て、はじめて通った美術教室の主催者レオン・ボンナが、反りが合わないながらもそのデッサン力には驚嘆していた・・・というのも頷けます。
ムンクは人間が抱える精神の葛藤を描き続けた画家であり、彼の絵にはいつも死のイメージが漂います。それは、早くに母や大好きな姉を喪うなど、その生い立ちのせいもあったのですが、この少女の生命感あふれる目の輝きを見ると、少しホッとします。決して幸福そうではないけれど、とにかく彼女は生きているんだ・・・と実感できます。
ベルリン時代、ムンクの仲間だったアドルフ・パウルは、この作品の制作中の様子を、「ベッドの端に裸の少女が座っていた。彼女は聖者のようには見えない。だが、その様子はどこか無垢で、内気な、恥ずかしげなところがあった。このような特性が、ムンクに彼女の絵を描かせたのだ」と語っています。
同じ年に描かれた「叫び」が生への不安に彩られていたとするなら、この作品にはわずかながら、みずみずしい希望が見てとれます。でも、彼女の後ろに不自然に伸びる影に気づいてしまうと、そこには果てしない闇が口をあけているとしか思えなくなるのも事実です。
★★★★★★★
オスロ、 国立美術館蔵