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「春の花」

オーギュスト・ルノワール (1866年)

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 豪華に、花瓶から花があふれています。しかし、清楚な白が基調になっているので、まったく華美な感じを与えない静物画に仕上がっています。

 ルノワールといえば、まず人物画・・・というイメージがありますが、彼は初期から晩年にかけて、花の静物画という伝統的な主題を常に描き続けています。その中でもこの作品は、彼の愛好家であり後援者でもあったシャルル・ル・クールのために制作されたもので、一輪ずつ丹念に静かに、そして心をこめて描きこまれています。

 ここで気がつくのが、その花の美しさもさることながら、花を生けてある、ひんやりとした感触の花瓶です。花の白とは微妙に違う陶器の冷たい白に、どこか日本風の模様が描かれています。これは、彼が13歳から陶器絵付師のもとで見習いをし、さまざまな装飾技術の修行を積んだことと無関係ではないような気がします。こうした、言うなればわき役の花瓶でも、きちんと絵付けされているのを見ると、決しておろそかに描きたくなかったのではないでしょうか。

 ルノワールの両親は、ブルジョワ出身の多くの画家の親とは違って、画家になりたいという彼の願いを聞き入れ、早く自活できるようにと陶磁器の絵付師のもとへ見習いに出したのです。それは、やはり職人であった両親の理解によるもので、その点ルノワールは、親の反対と闘わねばならなかった他の画家たちより幸運だったと言えます。
 ですから、ルノワールのなかには、良い意味でのフランスの職人気質・・・のようなものがしっかりと根付いていたのでしょう。彼の職人のような堅実な仕事ぶり、素材に対する深い愛着は、いつもその作品を根底から支え続けていました。

★★★★★★★
ケンブリッジ(米)、 フォッグ美術館蔵



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