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「書斎におけるナポレオン」

ジャック・ルイ・ダヴィッド(1812年)

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 ダヴィッドはナポレオンとたいへん関係の深い画家です。・・・というより、ナポレオンにもっとも信頼を置かれた画家だったと言っていいと思います。
 当時、国民的英雄だったナポレオンに従軍画家になることをすすめられたダヴィッドは、その恩返しの意味とナポレオンの英雄的風貌にもひかれて、その肖像画の制作を申し出たといいます。その中では、超大作「ナポレオンの戴冠式」「アルプス越えのナポレオン」「軍旗を下賜する皇帝」などが有名ですが、この作品はナポレオン43歳の肖像画です。

 ナポレオン独特の右手を懐に入れるポーズや、ナポレオン帝政様式の家具調度がピタッとはまって、中年の、やや太り気味の皇帝がはっきりとした印象でとらえられています。若いころの、痩せて精悍な表情が有名ですが、このように落ち着いた、分別ある雰囲気のナポレオンはめずらしいと思います。
 軍服の質感や、左手の甲から指にかけての表現には驚くほどリアリティーがあって、さすがに大画家ダヴィッド・・・と思わせてくれます。ナポレオンがプロパガンディストとしてダヴィッドを重く用いた理由が納得できる作品ではないでしょうか。

★★★★★★★
ワシントン、 ナショナルギャラリー蔵



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