黒の背景に浮かび上がる、けっこう妖しい感じの作品です。
陶器のように真っ白できれいな少年の背中がひどく印象的なこの作品は、一見すると、え?これがルノワール?・・・と、驚いてしまいます。
他の画家ならば、古代ローマ人のポーズでもとらせるところなのでしょうが、この職業モデルの少年の、休憩中の子供っぽいしぐさがルノワールの心をとらえたようです。
少年が寄りかかっている花模様の掛け布の豪華な感触が圧巻で、いかにも華やかな画面を追究したルノワールらしく思われます。布のたっぷりとした豪奢な感触と、少年の皮膚の冷たい硬質な感触の対比は、同じ白が並んでいるというのに、その違いの美しさには息を呑むほどです。
それにしても、少年に抱かれている猫の至福の表情はどうでしょうか。目を細め、しっぽの先と片腕をチョット少年の手に掛けて、嬉しそうに、幸せそうにしています。彼(彼女?)も、すっかり少年が気に入ったのでしょう。きっと、耳を澄ますと、ぜったいにゴロゴロとのどを鳴らしているはずです。
そして、猫の脚の裏の描写がまた丹念で、猫好きにはたまらないと思います。たいていの猫はたしかに、あんなふうに、いわゆる「ネコアシ模様」をしているのです。
美しい少年と猫の、ちょっと意外で謎めいた雰囲気の、印象的な美しい作品です。
★★★★★★★
パリ、 オルセー美術館蔵