この作品は、連作「積みわら」の15点のうちの1点です。モネは1890年代以降、多くの連作形式を試みるようになりますが、「積みわら」もまた、モネの感性を刺激する対象の一つでした。
この作品群を完成させるため、モネは畑の中に立ち、光線が変化するたびに、その刻々と変わる光の効果を別々のキャンバスに次々に描き上げていきました。この大胆な試みの源は、モネ自身が「移ろいの効果」と呼んでいるもので、絶えず変化する光と雰囲気の印象をとらえようとするものだったのです。
体力に自信のない身としては、一日中畑の中で描き続けるモネの疲労を思うだけで、そして、飽くことのない創作意欲に、ただただ頭が下がってしまいます。連続して描くということが、どれほど消耗することかを想像するだけで、ため息が出てしまうのです。
しかし、この絵の制作では、義理の娘ブランシュ・オシュデが、彼の描きかけのキャンバスを手押し車で運びながら、行動を共にしてくれたのだそうです。そうしたことが、モネの心の大きな力となって、15点の「積みわら」が完成したのでしょう。光と風のなかに立つ二人の姿が目に浮かぶようで、本当に胸が熱くなります。
ですから、この作品自体が好きというよりも、もしかすると、自然の姿をじかにキャンバスに描きたいというモネの不屈の精神力に一票・・・という気持ちが強いのかも知れません。
あくまでも戸外制作主義者であろうとしたモネは、とらえた印象を素早く描く必要から、本来の技量に加え、スピード感と柔軟な筆致を身につけていったのです。
★★★★★★★
シカゴ美術研究所 蔵