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「羽根をもつ少女」

ジャン・バプティスト・シャルダン (1741年)

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 羽根とラケットを持って、じっとおとなしくポーズする可憐な少女です。
 どこかフェルメールの作品に似ていますが、記念写真を撮るときみたいに緊張して、ちょっと悲しそうな表情をしているのは、少し疲れてきているのかも知れません。フワリとふくらんだスカートに青いリボンが下がっていて、その先に鋏がぶら下がっていますから、こんな危ない格好でバドミントンをするはずはありません。シャルダンに言われたとおりのスタイルで彼の造形的空間に立つことが、まだあどけない彼女の、今唯一の「お仕事」なのでしょう。

  「シャルダンはミルクカップを描くように女の胸を描く」
と言われましたが、少女の胸もとも、形体が偶然的なものを排除しながら充実しています。この作品はまさに「球と円錐と円筒形」で出来上がった人物画なのです。
 シャルダンの構成力には定評があります。18世紀のフランス絵画において、彼の構成ほど堅実なものは見出せないと言われるほどです。彼ほど、画面の上で造形的手段に全力投入する画家はいないかも知れません。それは、彼の中にある堅実な職人っぽい気質が、豊かに花開いた結果なのだろうと思います。

 また、シャルダンの描く人物は、みないつもつつましく静かで、そこには画家の人柄がそのまま反映されているようです。静かに呼吸する彼らは、みなこちらに視線を向けていません。それぞれが役割を心得て、各々の行為に深く沈潜しています。決して声高に物を語らない彼らは、シャルダンが提供した形と色と光と構図の中で、謙虚に清らかに存在しています。
 この羽根を持つ少女もまた、シャルダンの造形の実りの中で、永遠の生を与えられたようにポーズをとり続けています。

★★★★★★★
パリ、個人蔵(フィリップ・ロスチャイルド男爵)



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