ミケランジェロといえば、まず思い出すのが何と言ってもシスティーナ礼拝堂天井画の「アダム創造」なのですが、この作品のマリアは、そのアダムにひけをとらないほどのたくましい女性です。筋骨隆々のマリアなんて、え、うそ・・・という感じですが・・・。
この時代のマドンナといえば、長い青のマントで身を包み、そっとつつましやかにたたずんでいるのが一般的なのに、このマリアはまさしく陽気なイタリア女!・・・というイメージです。一応、衣装はそれらしくしていますが、まるでボディビルのコンテストに出る前みたいに袖を肩までたくし上げ、後ろから肩越しに幼いイエスを受け取ろうとしています。
イエスも従順な幼な児ではなく、まるでそれに逆らうようにマリアの頭を両手で押さえつけていて、なかなかきかん坊そうです。一人だけ、やけに年とったヨセフがちょっと困惑しながらイエスをマリアに渡そうとしているのも面白い光景だと思います。
後ろにいる若者たちがギリシャ彫刻を思わせるところから、ここは旧約聖書の世界なのではなく、ルネッサンス第3段階の、自由意志の発露が形となった世界で、それがこうした「聖家族」となったのかも知れません。どちらにしろ、健康で生活感のある聖母子もいいものです。
★★★★★★★
フィレンツェ、 ウフィッツィ美術館蔵