タイトルの通り、両腕を広げて大胆に横たわり、目を半分開いたような表情でかすかに微笑み、幸福そうにさえ見える、裸婦像です。
お腹なんて全然出ていなくて、ちょっとうらやましいくらいスタイルの良いモデルさんですが、なぜか世間一般で言う「官能的」という言葉には遠いような気がします。
モディリアーニの描く裸婦は、なんとなく共通して、いやらしく見えないのですが、気のせいでしょうか。
それはもしかすると、とても健康的で、生命の力が満ちあふれているからかも知れません。女・・・というより、人間・・・人間の生命そのものが、ここにあるからなのではないでしょうか。
それに、この作品のポーズにしても、よく見ると、少し不思議です。写実的に見たとき、正確ではないのです。右側の乳房は明らかに上から見たものであるのに、左側は側面から描かれています。そして、胴体と脚部の接合部分にしても、両脚が前に出すぎていて、いかにも無器用で不自然です。
では、モディリアーニのデッサンが狂っていたのかと言えば、それはあり得ません。日本を代表する彫刻家の佐藤忠良氏によると、美術学校時代、モディリアーニが、一日に100枚のデッサンを描いていると聞き、たいへん触発されたと語っています。
それほどデッサンを大切にしたモディリアーニのことですから、この作品もまた、どこか抽象的であり、多弁でない分、その芸術性がより高められているのかも知れません。
★★★★★★★
ミラノ、 個人蔵