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「自画像(アルル時代)」

ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ (1888年9月)

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「WebMuseum, Paris」のページにリンクします。

 アルルに住んでいたとき、ゴッホは自画像を6点しか描いていません。
 自画像が好きなゴッホにしては珍しいのですが、アルルの明るい外光のもとで思い切り風景画を制作できたことや、適当なモデルに恵まれたために肖像画を多く描いたことが原因のようです。そうした中でも、この作品は質の高い一作だと思います。

 髪を短く刈り上げ、遠くを見やるような鋭い眼光のゴッホ・・・あれ?どうしたのかな、と思ってしまいますが、実は彼は
「僕はここでまず第一に、永遠の仏陀を拝んでいる普通の坊さんのような性格を意図した」
と述べているのです。そして、
「この絵において、僕は日本人のように見える」
とも言っています。
 この言葉でも分かるように、ゴッホは早くから日本の浮世絵版画に親しんでおり、いわゆるジャポニスム的な作品も多く、日本的なものにとても惹かれていたようです。
 それは、アルルに移ってからより強くなったらしく、アルルについての彼の第一印象は、
「まるで日本にいるようだ。いたる所に、風景に、人物にも、明るい色の日本の絵が見える」
とまで言っているのです。
 なんだか、思いこみの激しさに少々驚かされますが、ゴッホにとっての日本は、ゴーギャンにとってのタヒチのように、明るいシャングリラだったようです。

 そして、この作品の左上には「我が友ポールG(ゴーギャン)へ」という書き込みが見えます。ゴーギャンと共に、画家の共同体を作ろうと夢見ていたゴッホは、この3カ月後に訪れる不幸な結末も知らず、高揚感に酔いながらこの書き込みをしたのだと思います。

 光背を思わせるようなバックの処理も自らの健康をアピールしているようで、かえって無理をして自ら躁状態を保とうとしている感のあるゴッホが痛々しく思えます。まだこの時、ゴーギャンはアルルに到着していませんでした。もしかすると、ゴッホの人生の中で、一番希望に満ちた幸福な時期の自画像なのかも知れません。

★★★★★★★
ケンブリッジ、 フォッグ美術館蔵



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