レストラン・フルネーズに集まった人々の笑い声や話し声が聞こえてきそうな、この5年前に描かれた「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」に、一見よく似た雰囲気の大作です。
しかし、決定的に違うのは、色彩が驚くほど明るくなり、そのコントラストが人物一人ひとりの綿密な描写を促しているという点です。そして、構図もより抑制されて、遠近が単純化され、くっきりとした印象に仕上がっています。
これは、「印象派の絵は輪郭が大まかで、それに満足している」という批判に応えようとしたものだと言われており、ルノワールが印象派の代表選手の座に安住する気はなく、独自の道を歩もうとする意欲を示すものだと思います。
この作品のモデルは、今のところ2人しか特定できていません。左手の手すりに寄りかかっているのがレストランの店主アルフォンス・フルネーズの息子。そして、犬と戯れている若い女性が、後にルノワール夫人となるお針子のアリーヌ・シャリゴです。
実際のレストラン・フルネーズは、この作品のように上品な集まりをする雰囲気の店ではなかったようですが、ルノワールは露骨な現実表現ではなく、現実にヴェールをかけて、雅びな姿を描こうと努めたようです。
ふくよかなバラ色の頬をもった女性たち、カンカン帽、山高帽などでおシャレをした男性たちの楽しげな語らいの場が、明るい光の中にのびのびと表現されています。
★★★★★★★
ワシントン、 フィリップス・コレクション蔵