黄色のバックに、葉の緑と花の青が清らかに映えた美しいアイリスです。アルル時代の「ひまわり」と並んで、ゴッホの静物画の中でも最高の出来映えではないでしょうか。
ゴッホは1890年5月16日、サン・レミを離れてオーヴェールへ移りますが、その前の2~3週間で、いくつかの作品を描きました。
彼自身、
「サン・レミ最後の数日間、僕は気違いのように仕事をした。大きな花束、紫色のあやめ、バラの大きな花束、風景・・・」
と書いています。その中の一作だと思われますが、とても気違いのように描いたものとは思われません。
構図的にもしっかりと安定し、エレガントで素晴らしいアイリスだと思います。
狂気と死への恐怖にとらわれ続けたゴッホでしたが、こんなに安定した仕事ができる時間も持つことができたのだと思うと、少しホッとします。
★★★★★★★
アムステルダム、 国立ファン・ゴッホ美術館蔵