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「若い女性の肖像」

ペトルス・クリストゥス (1470年ころ)

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 目の強さが印象的な、ハッとさせられるような女性像です。貴婦人かも知れませんし、もしかするとまだ少女なのかも知れません。どこかで会ったことがあるような感じ….そう思った瞬間、500年の時を跳び越えて、彼女の薄い皮膚の下には温かい血が流れ始めたような錯覚にとらわれてしまいます。

 この作品は、冷ややかで硬質な画面ですが、じつはきわめてよく計算された、幾何学的基本形で構成されています。円筒形の帽子、半円形におさまった首飾り、V字の襟、背景も直線のみでまとめられたシャープさなのです。そして、彼女の小さな肩の華奢な身体つきも、薄い眉も、画面をいっそう神秘的に魅力的に引き立ててくれているのです。

 ヤン・ファン・エイクの死後、その工房を引き継いだクリストゥスは、宗教画よりもむしろ、鋭い人間観察に基づいた肖像画に独自性をもたせました。まさしく、クリストゥスが本領を発揮した分野が肖像画だったと言えます。その中でも、この冷たい美しさを持った女性の肖像は、クリストゥス晩年の佳作です。
 師であるヤン・ファン・エイクが、暗い無地のバックを好んだのに対し、彼は明らかに人物の半身を室内に置いています。そうすることによって、自然光の中で輝きを放つ、さまざまなニュアンスを含んだ、真に生きた人間を描きたいと望んだのかも知れません。

★★★★★★★
ベルリン国立美術館 蔵



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