• ごあいさつ
  • What's New
  • 私の好きな絵
  • 私の好きな美術館
  • 全国の美術館への旅

「見よ、われは主のはした女なり(聖告)」

ダンテ・ガブリエル・ロセッティ (1850年)

ジャンプ

ここをクリックすると、作品のある
「CGFA」のページにリンクします。

 朝の光が差し込む部屋のベッドで、壁に身を寄せるようにして大天使ガブリエルのお告げを聞くマリアです。痛々しいほどの驚きとおびえが見てとれて、思わず、
「マリア、がんばって!」
と声をかけたくなってしまいます。

 つまり、これは、巨匠たちが繰り返し描いてきた「受胎告知」なわけで、マリアとしては、喜びをもって受け入れるべき運命なのですが、このマリアの畏怖の表情はリアリティーがあって印象的です。
 静かに大天使のお告げを聞くだけの従来のマリアより、ずっと人間的で共感が持てます。本来、神ならぬ身のマリアなら、こうした反応はごく自然なのではないでしょうか。いくら神様からの深い配慮を携えた大天使の言葉でも、まだ若いマリアが困惑するのはもっともな話だと十分に納得できるのです。

 それにしても、この作品は画面全体に白が強調されていること、また、画面の右に置かれている百合の刺繍、そして大天使ガブリエルが手にした百合の花・・・と、マリアの純潔が感覚的に強く象徴されています。そして、このマリア本人の、幼さが残る清純な表情も本当に美しくて、ロセッティがこの絵に深く思い入れていたことを感じさせてくれます。
 この絵が完成する1ヶ月前、後に妻となるエリザベス(リジー)・シダルと出会っていますから、もしかするとマリアはリジーの姿そのものなのかも知れません。しかし、今では、彼の妹のクリスティナであるとの説が有力です。

 この作品は残念ながらナショナル・インスティテューションにおいて酷評され、以後ロセッティは作品を公にしなくなりますが、大天使が異例にも翼のない普通の女性の姿だったりして、あまりにも現実的でありすぎたために不評を買ってしまったのかも知れません。

★★★★★★★
ロンドン、 テイトギャラリー蔵



page top