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「親和力」

ルネ・マグリット (1935年)

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 かごの中にいるのは鳥ではなくて卵・・・それも異常な大きさの卵です。
 この「異常な大きさ」というのがマグリットはけっこう得意なのですが、これは彼自身の内面にある閉所恐怖症的な強烈な不安感情を象徴的に表していると言われています。

 「ある夜、鳥かごが置かれている部屋で目覚めた。鳥は眠っていた。偉大なる見間違いによって鳥が目前から消え、私はかごの中に卵を見た。このとき、新しい驚くべき詩のヒントを私は得たのだ。というのは、それまでは二つの相反する事物の出会いから衝撃が呼び起こされていたのに対して、このとき私が感じた衝撃は二つの親しい事物、つまり鳥かごと卵の親和力から呼び起こされたからだ」
というマグリットの言葉から、タイトルは「親和力」とされています。

 しかし、ここにマグリットの神秘的な皮肉が隠されている気がします。人間は愚かにも、絶えず何かを支配してかごに閉じこめ、美しい生命の輝きを押さえつけてきました。人間の卑しいまでの愚かさ、そして現代社会に蔓延する低俗さに対して、おそらくマグリットは憤りを抱き続けていたのだと思います。
 ただ、控え目で思慮深い彼は、直接的な怒りの表現などしませんでした。そのかわり、存在の裏面を巧みにつかまえ、論理を無視して見えるものに変えてしまう彼らしいしなやかさで、破壊的な想いを心地よく表現してしまったのではないでしょうか。
 そんな洗練されたマグリットの感性が、真っ白な卵に凝縮されているようです。

★★★★★★★
ニューヨーク リチャード・S・ザイスラー・コレクション



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