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「訪問」

シルヴェストロ・レーガ (1867年)

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 「お元気だった?」「ええ、あなたも….」
そんな密やかな挨拶が聞こえてくるような、静けさに包まれた作品です。一瞬、時もその鼓動を止めたようで、私たちの目と心はこの小さな世界に引き込まれます。

 この絵は、実際に見ても31×60㎝と比較的小さく、決して強い主張をしてくるわけではありません。しかし、静かな田舎の情景、石畳や壁に当たって画面全体に広がってゆく穏やかな光が本当に心なごませてくれます。そして、そんな中で、女性たちのさりげない黒の衣装が、静かな存在感を示しているのです。
 この作品は宗教画ではありませんが、構図の設定は明らかに「聖母マリアのエリサベツ訪問」に霊感を得ていると思われます。モデルは画家の友人とその娘…。その意味でも本当に親密な作品です。さらによく見たとき、レーガの大きな特徴でもある、水平線、垂直線が基軸となった端正で心地良い画面が構築されているのがわかります。そして、明晰なフォルム、抑制のきいた色づかいが美しく、鑑賞する側も、レーガの創り上げた物語の世界に知らず知らず安らいでしまうのです。

 イタリアでは1850年から60年代にかけて、ヴェネツィアを中心に、色斑を用いて描く画家たちが登場し、レーガもその一人でした。初期の頃には肖像画やアカデミックな歴史画、戦争画も描きましたが、やがて女性像を点景に加えた風俗的な風景画を制作するようになります。ごく日常的な主題、戸外の光が作り出す自然な色彩、整った構図はとても洗練された印象で、近代的な「エリサベツ訪問」を再び私たちに見せてくれているようです。 

★★★★★★★
ローマ国立近代美術館 蔵



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