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「赤い屋根・村のはずれ・冬」

カミーユ・ピサロ (1877年)

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「WebMuseum, Paris」のページにリンクします。

 ピサロにしてはわりと鮮やかな赤い屋根が印象的な作品です。でも、この絵の主役はその屋根よりも、むしろ複雑に入り組んだ樹木の幹と枝なのではないかと思われます。鑑賞者の視線は、いつの間にか家よりももっと前面の木々をすべって行くような、そんな感覚にとらわれます。

 この作品のように、ピサロが画面の表面に多くのものを描き過ぎるようになったのは、研究熱心なセザンヌと共に制作するようになったためかも知れないと言われています。
 重厚に塗られた背景、そして、目はさまざまな層を分離します。視覚上の豊かさを楽しむ一方、ますます色彩の範囲は広がっていくのです。このように細部にわたって手の込んだ描き方をするのは、印象派の画家の中ではおそらくモネだけでしょう。

 しかし、ピサロ自身、この描法が自分に合っていない、もしくは困難だとも感じていたらしく、視覚上の明快さを欠き、色彩が鈍く濁っていることも感じていたようで、塗りすぎてしまう自分自身を改善したいと考えてもいたようです。
 そのため、やがてピサロは、スーラやシニャックの提唱する、科学的な基礎に基づいての、色調を分割する方法に傾倒するようになっていくわけですが、この時期の、実に濃密なピサロの画面もまた、ある時期の彼を表現しているようで、意義深いものがあります。

★★★★★★★
パリ、 オルセー美術館蔵



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