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「霜」

カミーユ・ピサロ (1873年)

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 広大な畑に霜が降りた朝のひんやりした空気が、のびやかなタッチで堅実に闊達に描かれています。
そして、大地の声が聞こえてくるような雄大さが、現実感をもって胸に迫って来るのです。

 この時期、ピサロはモネの影響をもっとも強く受けていたと思われます。作品全体が軽快で自然な筆触、そして明るい色調に包まれ、絵の具が斑点のように置かれていて、きびきびとした活気にあふれている様子が見る者に心地よさを感じさせます。
 そのうえ、ある種、幾何学的とも思えるような構図が、非常に張りのある印象を与えてくれます。
また、遠くに見える積みわらもモネを連想させ、その上に広がる凛とした冬の空には妥協を許さぬ自然の姿が感じられます。

 この作品は、1874年4月15日に開かれた第1回印象派展に出品した5点のうちの1点ですが、残念ながらおおむね不評だったようです。
 『シャバリエ』紙という新聞の記者ルイ・ルロワは、友人をこの展覧会に連れて行き、彼をピサロの作品の前に案内したとき、この友人は念入りにめがねのレンズを拭き直してから、
「いったい、これは何だ?」
と聞いたそうです。ルロワが
「これは、深く掘り起こされた畝に降りた霜だよ」
と説明すると、友人は、
「畝だって?霜だって?汚いカンヴァスをパレットで等間隔にひっかいただけだろう。上も下もさっぱりわからない」
と言い、
「でも、ここには印象があるよ」
というルロワに、
「そうだとも、おかしな印象だ!」
と叫んだそうです。

 このように不評だった作品ではありましたが、反面、ピサロの筆触の柔らかさ、光の扱いの率直さ、そして色調の豊かさはエミール・ゾラに、「カミーユ・ピサロは今日の3人ないし4人の真の画家の一人である。彼は昔の巨匠の伝統に従いながら、しかも自由に描いている。私はこれほど確かな技術に出会ったことがない」とまで言わしめているのです。

★★★★★★★
パリ、 オルセー美術館蔵



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