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「69歳の自画像」

フランシスコ・デ・ゴヤ (1815年)

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 ゴヤ69歳の自画像です。
 黒い背景からじっとこちらを見つめている両眼が、無言のうちに多くのことを語りかけてきます。

 「画家の眼は、何よりも影の部分にそそがれねばならない。光の当たる部分はもちろん大切だが、影の部分はもっと大切だ。影の中には無数の光と色彩が隠されている。だから、影を正確に観察し、精密に表現するならば、全体の形と色彩はおのずと立ち現れるのだ」
というゴヤ自身の言葉を実証するかのような、やや憔悴の色は見えるものの、印象的で力強い自画像です。
 69歳という年齢でありながら、情熱を秘めた眼差し、意志的な口元、すでに何も聞き取れなくなっていたけれど存在感のある耳・・・。どの部分も前向きな力強さにあふれています。
 また、顔にも艶と張りがあり、決して人生をあきらめていない人の生命感に満ちている・・・という感じがして、高い精神性をもって時代と社会を見つめようとする姿勢が感じられます。

 ゴヤは、色彩や形への興味だけで絵を描くことはありませんでした。いつも、人間という存在への興味が優先していて、それは自身に対しても同じだったのではないでしょうか。そして、絶えず自己との対話、時代との対話を基盤として描き、その絵画は常に時代と共にあり、生き続けたのです。

★★★★★★★
マドリード、サン・フェルナンド王立美術アカデミー蔵



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